マネーリテラシー概論 超入門【第7回】株式

言わずと知れた王道の投資先


このマネリテシリーズもそろそろゴールが見えてきましたね。

前回の第6回ではそこそこリターンが期待できて,リスクもそこそこな穴場投資商品である「債券」についてご紹介しました。

債券が穴場であるゆえんは,買い手である投資家にとってメリットが大きくても,売り手にとってはあまりメリットがないため,あまりアピールされない為です。


今回ご紹介する株式は誰もが名前くらいは知っている金融資産ですよね。

「本日の日経平均株価は~」とか「株だけはやるな」とかとか?
とりあえず投資といえば「株」という言葉を思い浮かべるのではないでしょうか?

一方で,有名なのは名ばかりでその詳細について聞かれても上手く答えられないという方も多いことと思います。

ひとえに「株」と言っても,ここでは全てをご紹介できませんので,今回は,そもそも株って何?という本質的な部分について簡単にご紹介します。

このことを意外と知らずに株式投資をしている方も多いですが,だからこそここでしっかりと押さえておきましょう。

キーワード

  • 株式会社
  • 株主
  • 上場      などなど


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今回は本当に,とっても大事なことですので,しっかり書いておきます👍



株式会社と株式

株(株式)とは何かということを本質的に理解する為には,
まず株式会社についての理解が欠かせません

とは言いつつも,株式投資をしておきながら株式会社や株式について誤解している人というのも残念ながらいます。

必ずしも必要な知識ではないかもしれませんが,最低限の事を簡単に押さえておきましょう。


株式会社

株式会社というのは,法人・会社の一形態で利益を目的とした組織です。

株式会社では利益を生み出す事業を行うためにまずお金を集める必要があります。
この時に,お金を集める手段の一つとして「株式」の発行があります。

この株式は「会社の所有権」を分割したものです。
投資家はお金と引き換えに,会社の所有権である株式を手に入れます。

ここで,法人の構成員・オーナーは普通「社員」と呼ばれますが,株式会社においては株を持っている人がそれに該当するため特に「株主」と呼ばれます。

(まずここで1つ,よくある誤解ですが社員という言葉は本来,従業員ではなく株式会社を含めた法人の構成員を指す言葉なのです。)

Point:株を買うということは会社のオーナー(株主)の一人になるということ

ちなみに,この株式会社の仕組みは大航海時代にできたそうです。
当時,貿易では莫大な利益を得ることができた一方で,嵐などで貿易に使う高額な船を失う可能性も大きかったのです。

そこで,みんなでお金を出し合って(出資して)船を買えば,もし船を失っても,一人で船を買った場合よりは痛くないよねという訳です。

株主とその権利

前回ご紹介した債券も会社が投資家たちからお金を集める手段でしたが,債券の場合はいわば借金であり会社は債権者である投資家への返済義務があります。

一方で,株式を買った投資家に対しては株式会社はその購入額を返済する義務はありません

これも債券より株式の方が発行しやすく高リスクな金融商品である一因かもしれません。

しかし,株主となった投資家たちは株式会社のオーナーとして会社に対し様々な権利を有しています。

また,その会社の株式を有している限りその会社の(純)資産や(純)利益の一部はオーナーであるのものです。
もちろん持ち株数に応じてですが。

経営に参加する権利

1つは,会社の経営に参加する権利です。共益権とも呼びます。

具体的には,株主総会において議決権を行使することができます。

株主総会は株主達によって組織される株式会社における最高議決機関です。

この株主総会では例えば,株主達に代わって普段会社の経営を行う取締役など役員の選出のような重要な事項について決議を行います。

この株主が経営者に会社の経営を委ねることを特に「所有と経営の分離」と呼んだりします。

ちなみに,株主が社員の特別な呼び方であったように取締役は一般社団法人などにおける理事に相当します。

また,(代表)取締役,監査役などは法律で定義された役員であるのに対し,社長や会長,専務,常務,執行役などの役員や部長や課長などの管理職はあくまで会社が独自に置いた役職であり,会社の定款(テイカン)などで定義されます。

(*定款とは簡単に言うと会社を設立するときに決めなければいけない憲法のようなものです)

これら役職の名称が会社によってまちまちなのはこのためですね。

ちなみに取締役を複数置く場合,代表権をもつ代表取締役を置くことができ代表取締役が社長を兼務したり,代表取締役をもって社長としたりしますが,この辺の役職は業界によって独自の呼び方があったりします(しました)。

例えば,
銀行における頭取:
雅楽の音頭取りを語源として,昔のお偉いさんが銀行の代表者の役職をこのように命名したとかなんとか。
例)ドラマ「半沢直樹」の中野渡 頭取など。

新聞社における社主:
実質的な会社の所有者(主)である大株主が代表取締などを兼務することが多かったため。
例)マンガ・アニメ「美味しんぼ」の大原 社主など。

よくある誤解その2:
会社では会長が一番偉く社長,専務,常務,部長,課長…などと続くと思われているが,あえて会社で一番偉い人を決めるのであれば会社のオーナーである(筆頭)株主が一番偉い。

実際に定食屋チェーンの大戸屋という会社は,元から大株主であったコロワイドという飲食・居酒屋チェーンによって買収(敵対的買収)され,その後大戸屋の社長をはじめとした役員はコロワイドの方針でキレイに解任されました。

雇われ社長よりも(大)株主の方がずっと偉いという実例の一つですね。

(ただ,何をもって偉いとするのかも謎ですがね)

株主(社員)と取締役は法律上必須とされているのに対し,使用人(従業員)は必ずしも置く必要はなく,株主と取締役も兼任できるため,場合によっては1人だけの株式会社も存在可能です。

色々と寄り道しましたが,この経営に参加する権利も株式投資を始めて株を買うと関わる機会が生じます。
具体的には議決権行使書なるものが送られてきます。

大株主の影響が大きいことは言うまでもなく,一人の株主の議決権行使は意味がないかもしれませんが,株主総会は1年に必ず一回は開催しないといけませんし,議決権行使も一定以上必要とされています。

そうでなくても,会社の構成員の一人として形式だけでも意思を示すための大切な権利だと私は思っています。

お金を受け取る権利

2つ目の株主としての権利は,「お金を受け取る権利」です。
1つ目の権利と違い,皆さんの大好きな権利ですね。
私も、もちろん大好きです。

この権利は自益権とも呼ばれます。

この権利は状況によってさらに2つに分かれます。

まず,余剰金配当請求権は会社が利益を得た際にその一部を分配することを求める権利です。

株式会社は先に示したように株主達の利益のために作られる法人ですから,会社が株主還元を行うのは当然であり,最も株主らしい権利と言えそうです。

いわゆる配当金は,この権利に基づき受け取るものですが,配当金を出せる基準というのは,実は法律でしっかりっと規定されています。

大赤字の会社や倒産しそうな会社が無理に配当を出していたら大問題ですよね。

という訳で,普通に株式投資をやる上では株主が配当を請求するというよりは,決まった時期に経営陣が法律に則った配当金の額をいろいろ考えて判断し,それを株主が受け取る(振り込まれる)という場合がほとんどです。

この配当とは別に,残余財産分配請求権という権利があります。
これは会社が解散する際に,会社に残っている財産の分配を求める権利です。

ですが,通常であれば会社の存続を望むのが普通と考えると,普通に株式投資をしていく上ではあまり考えなくてよい(というよりは考えたくない?)権利でしょう。


これらの権利は普通,所有している株数に応じてどんな株主に対しても平等に保証される権利です。

例えば,100株主と1000株主とでは受け取る配当の金額は異なりますが,いずれの場合も1株当たりの受け取れる配当金額は等しいです。

このような原則を「株主平等原則」と呼びます。

ですが,保有する株式の数や割合,種類によってはさらなる権利を得ることができます。

(*会社としては議決権の無い株式など,権利に制限を設けた株式も発行できます)

株式は,先ほども紹介したように株式会社のオーナーとしての権利を等分割したものです。

ニュースなどで敵対的買収などという言葉も耳にしますが,世の中に出回っている株式を50%を超えて所持するということは,株主総会における過半数の議決権を行使できるということです。

つまり50%越えの株式を集めえてしてしまえば,実質的に会社を手に入れたことになります。

その他にも細々とした権利が株主にはありますが,ここでは割愛します。

株主優待

配当金と共に,株主還元としてよく知られているのが株主優待です。

株主優待は,会社が株主に対して日々のお礼や,自社に対する理解を深めてもらう事などを目的として

  • 自社製品

  • 自社サービスを受ける際に使いえる金券・割引

  • はたまた自社とは何にも関係ないQUOカードやカタログギフト

などを株主にプレゼントするという制度です。

実はこの株主優待は,日本ならではの制度で他の国にはほとんどありません。
(また,株主優待は海外投資家には届かない場合が多いようです。)

株主優待を活用して現金をあまり使わず生活する元プロ棋士の桐谷さんがテレビなどで取り上げられたことなどもあって,今では,株主優待を主な目的とする「優待投資」も株式投資における立派なジャンルになっています。

(私も,家族のもとに届く株主優待をきっかけに株式に興味を持ったわけですが💦)

しかしながら,先に示した配当や議決権行使はしっかり法律で規定され,「株主平等原則」が適用されるのに対し,株主優待はあくまでもプレゼント(オマケ)でしかありません。

これと言って法律で決まりがあるわけではなく,会社が突然一方的に内容を変更したり廃止したりすることができます。

また株式の保有数や保有期間で対象外になったり優待の程度が異なる場合もあり必ずしも株主平等原則が適応されないグレーな制度でもあります。

株主優待をメインの目的とした株式投資は初心者のうちは控えたほうが無難でしょう。

Point:株主になると会社に対して様々な権利が得られる

株式会社と上場

株式会社と一言でいっても様々な株式会社があり私たちが普段株式を購入できる会社というのはその一部です。

ここで,よくある誤解3つ目です。
「株を買って会社を応援‼」と言っている方が世の中にはいますが,株を買ったからと言って,必ずしも会社の応援になるという訳ではありません。
(むしろ場合によってはその逆になってしまう可能性もあり得ます)

株式は会社がお金を集めるための手段の一つと紹介しましたが,通常,投資家が株を買った際に会社にお金が渡るのは特殊な場合に限られます。

(特殊な場合とは,新規株式公開や公募増資などの呼ばれる場合ですが,このシリーズの目的からはそれるのでこの記事では扱いません。)

投資家が普通に証券会社に注文を出して株を買うのでは投資家が会社のオーナになることはできても会社には一銭も入りません。

これは普段投資家が株を売っている相手が他の投資家であり,会社ではないからです。

株式の価格である株価が変動するということは,それだけ投資家たちが株式を売買しているということですね。

そして,投資家同士が株式の売買を行う場がいわゆる「(株式)市場」です。
(厳密には普通の投資家が証券会社を介さず直接売買することはないと思いますが)

市場で不特定多数の投資家が株を売買できるようにすることを市場に上げると書いて上場と呼びます。
株式公開もほぼ同じ意味で使われます。

また,上場企業は証券取引所に年会費を収める必要があります

そもそも,市場(マーケット)とは株式に限ったものではなく,小麦やトウモロコシ,貴金属,原油,仮想通貨,通貨,債券などなどモノを売買するところ全般を指します。

例えば,よく耳にする豊洲市場(以前は築地)や大田市場は食材などを扱う市場といった感じですね。

株式の場合は,日本国内で有名な所では東京証券取引所の東証一部,東証二部,マザーズ,ジャスダックの4つの市場がありました。(*1

この4つの市場は現在

*2022年の市場再編により
 一部→プライム市場
 二部→スタンダード市場
 ジャスダック,マザーズ→グロース市場となりました。


プライム上場(旧 東証一部上場)という言葉はよく耳にする紋所のような言葉ですね。


プライム上場と無条件に良いと感じるかもしれませんが,普段一般消費としての目線としてそれは必ずしも正しいのでしょうか?

(よくある誤解その4,プライム上場は無条件にすごい!?)

これについて少しだけご紹介します。

プライム市場,スタンダード市場
日本を代表する大企業の多くが上場しているのがプライム・スタンダード市場(旧 東証一部,二部市場)です。

特にプライム市場は上場するための条件が日本で最も厳しい市場です。

またスタンダード市場はプライム市場に準ずる上場条件が厳しい市場です。

(ですが少なくとも2021年1月現在では一部上場企業の方が多く,名前の知れている大企業でも旧二部上場のところもあります)

???と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが,ここではそれで大丈夫です。
逆に言うとそれくらいの違いしかないということです。

投資家としての目線ではやはり市場の格は大きな違いです。
その企業の財務などを判断する重要なパラメータの一つとも言えます。

また上場企業には非上場企業にはない制約や負担があるというのも確かです。

しかしながら,消費者や一般住民としての目線で非上場企業より上場企業,スタンダード上よりプライム上場の方が,サービス・商品の質,技術などの面でも上かと言えばそうとも限りません

むしろその逆の場合もあり得るわけです。

(個人的には消費者として訪れたのに,商品やサービスの中身よりもプライム上場という会社の肩書ばかりアピールされると警戒してしまいます。)

世間のイメージに惑わされずあらゆる判断材料を場面に合わせて使えるようになりたいものです。


グロース(旧マザーズ,ジャスダック)
上記のプライム市場は大企業,有名企業などが主に上場している一方で,グロース市場(旧マザーズやジャスダック)は新興市場とも呼ばれ,比較的新しく,その名の通りまだまだ成長過程の企業が多く上場しているのが特徴です。

そのため,上場のための基準もプライムやスタンダードよりは厳しくないです。

といいつつ,日本でも有名なあのハンバーガーの会社もグロース市場に上場してます。

ジャスダックはさらにスタンダードとグロースに分けられ,前者は後者よりも比較的基準が厳しくなっています。
(今となっては昔のことですが。)

ジャスダックというのはアメリカのナスダックに由来していたようです。

このほかにも札幌証券取引所のアンビシャス市場など,東京以外にも株式の取引所や市場はあります。

そして,これらの株式市場を運営しているところもまた日本取引所グループという株式会社とその子会社です。

公的な機関という印象ですが,実際はそうではないのですね。
この,日本取引所グループ(8697)もまた東証プライム市場に上場しています。

まとめ

今回は,金融資産の代表格である「株式」や株式会社とは何か?
その株式を上場するとはどういうことか?市場とは?
という本質的なことについてだけ触れました。

本当に簡単に触れるだけのつもりだったのですが寄り道をしたためもあってかなり長くなったうえにさらに長くなりそうなので,ここでいったん打ち切ります。

とはいえ株式の正体についてはご理解いただけたのではと思います。

と言うよりは,株式投資はとても奥が深くこのシリーズの一回分だけでは収まりきらない為,別のシリーズを用意してそこでさらに細かなテーマごとにご紹介します。

さて,ここで再度株式のリスク・リターンを確認しましょう。

株式は,リスクとリターンが債券や銀行預金よりも大きな金融資産でしたね。

ここまでで,紹介した順番について何か気づいた方はいますでしょうか?
実はこのリスク・リターンの小さい順にこれまでご紹介してきました。


しかし,一つだけ例外があります。それが次回ご紹介する投資信託です。

なぜ,投資信託だけ順番通りでなく最後にしたのか,次回はその理由と共に,投資信託の仕組みや特徴についてご紹介していきます。

それでは,お疲れ様でした~。




参考文献

4)ミアン サミ,教養としての投資入門,朝日新聞出版,2020,p.184-188