宝くじ定期預金は効果的な資産の運用手段といえるのか? 

実質金利を考える


マネーリテラシー概論 超入門シリーズでもお伝えしたように,通常,銀行預金はお世辞にも効率のよい資産運用の手段とは言えません。


しかし,世の中には「宝くじ付き定期預金」や「懸賞金付き定期預金」と呼ばれる
ユニークな金融商品が存在します。

ここでは詳しく述べませんが,宝くじは還元率が著しく低く「愚か者の税金」とも呼ばれ別の記事でも紹介したマイナスサムゲームの中でも特にたちの悪い部類です。

参考までに,以下はマイナスサムゲームについても触れた過去の記事です。

それゆえマネーリテラシーの高い人は宝くじなんて普通は買おうと思わないでしょう。

しかし今回ご紹介する宝くじ定期預金では宝くじを自らが買うのではなく,預金先の銀行が買ってくれるため預金者はノーダメージです。

今回はそんな宝くじ定期預金の実質的な金利を算出し現実的な目線で資産運用の手段として有りなのか否かを考察していきます。

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今回ご紹介する定期預金は元本保証ですが,しっかり書いておきます👍


概要

宝くじ定期預金はその名のとおり,定期預金の金利に加え宝くじが受け取れる金融商品で,一部の地方銀行や信用金庫で取り扱っています。

宝くじが貰えるといっても,預金先の金融機関によって実物が送られてくる場合もあれば
番号だけ通知されるという場合もあるそうです。

また年間で貰える宝くじの枚数や預け入れ額の下限にも違いがあります。

なお通常の定期預金の利息部分には課税されますが,宝くじの当選金には課税されません。
(というよりは,宝くじには購入時に約50%もの税金がかけられているといえます💧)


一方,懸賞金付き定期預金という金融商品も存在し一部の信用金庫で扱っているようです。

宝くじに比べ当選金額は低く当選確率は高いようです。
こちらの場合,当選した懸賞金は課税対象となるようですのでお気を付けください。

今回は管理人も利用しているスルガ銀行の宝くじ定期預金を例にその実質金利を考えていきます。

実質金利の算出

ここからは本題である宝くじ定期の実質金利を考えていきます。

先ず今回対象とするスルガ銀行の宝くじ定期預金について簡単にまとめておきます。

~ お知らせ ~

下記の宝くじ定期預金について、スルガ銀行から”改悪のお知らせ”がありました。
詳しくは、上記リンクをご確認頂きたいのですが、

要するに「もらえる宝くじの枚数が減りますよ。」というお知らせです。

下記の計算では毎回宝くじが10枚もらえる300万円以上の定期預金であれば一枚は300円の当たり(末等)がある、という前提で利回りを算出していますが、この改悪により、その前提が崩れることとなります。

基本的な利回り計算の仕方としては共通ですが、新規約の条件とは合致しない点があることにご注意ください。

以上 


宝くじについて
・100万円/一口の場合 5枚×年2回 (ドリーム,年末)
・300万円/一口の場合 10枚×年3回 (ドリーム,サマー,年末)
 (以降300万円ごとに1回あたり10枚追加)

スルガ銀行では宝くじの現物が簡易書留で郵送されてきます

2021年 年末ジャンボ宝くじを最後にスルガ銀行でも現物の郵送は終了しました。
書留でない為不在時の処理が無くなって楽な一方で、宝くじの絵柄も楽しんでいたので少し残念。
でも、やっぱり色々楽なほうが嬉しいかも?



期間
3年満期 原則として途中解約できない
(途中解約できないと言っても,電話で確認したところ急にお金が必要な場合などはしっかり解約して引き出せるようです)

金利
  • 預入れ後6か月間は、 預入時の店頭表示の利率を適用。
  • 6か月間経過後から6か月毎に「スーパー定期」6か月を指標として利率を変更。

*2020.12月時点では0.002 % (0.0015937 %)
 今回はこの金利で計算します。

その他
  • 預金保険の対象(元本保証)
  • マル優の取り扱いはできない

おまけ
  • 宝くじは全て,当たると有名な「西銀座チャンスセンター」を通して購入。
  • 発売日当日は福徳の神が祭られている静岡県三島市にある三嶋大社に当選祈願。

詳しくはスルガ銀行のサイト↓をご覧くださいhttps://www.surugabank.co.jp/dream/services/fixed_lottery.html(2020.12.13)

他の金融機関でも共通して言えることですが,宝くじ定期預金は預け入れ額の下限が高めで,期間も数年と長めに設定されていること多いです。

まとまった金額がやや長期間拘束されるいう点がこの定期預金のデメリットといえそうです。

一方で,銀行預金の例にもれず金利は低くても元本保証でリスクは小さいです。


スルガ銀行ではよく当たると言われている西銀座のチャンスセンターに預金者がわざわざ足を運ばず宝くじを手に入れることができる点と,当選祈願を預金者に代わって行っているという点を売りにしているようです。

個人的には,前者はどこで買っても確率的には変わらないと考えるとイマイチですが,神社が好きな管理人は後者をあくまで気持ち的な問題ですが気にっています。

全体の預金者数は分かりませんが,実際に高額当選の実績も一定数あるそうです。


また,連番,バラ,預入金額によってはその他に通番?も選べるようです。
(管理人は宝くじ研究家ではないのでこのへんのことは分かりませんが,低額当選はバラの方がほんの少しだけ確率が高くなるそうですね)

ここでは,以下のように条件を仮定します。

  • 利回りが最大でかつ金額が少ない300万円1口 バラで預金
    (つまり,年3回×10枚の宝くじが送られてくる)

  • 宝くじは10枚に1枚は確実に末等の300円が必ず当たる

  • 定期預金自体の実質金利は0.0015937 %

  • 金額の小数点以下は切り捨て

まず定期預金本体の利息が
300万 円×0.0015937%×0.01=47.811≃47 円/年

また1年あたりの宝くじの最低当選金額は
300円×年3回=900 円/年

ゆえに,この条件で受け取れる1年あたりの最低の利息合計額は
900+47=947 円

よって,これを預金額300万円で割ることにより利回りを求めると
947 円÷300万 円=0.00031567

これに100を乗じることで100分率に換算すると
最終的にスルガ銀行の宝くじ定期預金の実質金利は年利0.03156667%と求められました。

考察

最後に先ほど求めた実質金利をもとにスルガ銀行の宝くじ定期預金は資産運用の手段として適切なのかどうか考えていきましょう。

さて,このような場合銀行の金利とよく比較対象とされるのが国債です。


ここでは期間が同じ3年固定金利の個人向け国債と比較します。

個人向け国債の商品概要はこちら↓(財務省のサイトに飛びます)


上記のサイトによれば現在(2020.12月時点)の国債の金利の下限は0.05%(年率)です。

3年の個人向け国債ではこの金利が保証され3年間ずっと上がりも下がりもしません。


ただし国債の金利も通常課税されますので実質金利は0.0398425%(税引後)と考えるのが妥当です。

(税引後年率はSBI証券のサイトの個人向け国債ページ:
https://site3.sbisec.co.jp/ETGate/WPLETmgR001Control?OutSide=on&getFlg=on&burl=search_bond&cat1=bond&cat2=japan&dir=japan&file=bond_domestic_kojin.htmlより,2020.12.13)


ゆえに,先ほど求めたスルガ銀行宝くじ定期預金の実質金利との差は

0.0398425%-0.03156667%0.00827583%と求められます。


300万円分の投資をしたと考えると金額にして

300万 円×0.00827583%×0.01=248.2749≃248円の差です。


単純に金利だけ比較した場合はやや国債の方が勝るようです。
(銀行預金と国債の金利の比較と考えると少し大きな差といえそうです)


しかし,国債は保有者が死亡したり大規模災害に巻き込まれたりしない限り,1年未満での換金ができません。

スルガ銀行の宝くじ定期預金も,原則として3年間途中解約ができませんが前述のとおり電話で確認したところその辺はそこそこ柔軟に対応してくれるようです。
(実は管理人も1度だけ,1年も経たないうちに解約を経験済みですが金利もしっかりいただけました)

この点は金融機関によってもかわるでしょうから,他の銀行はどうなのか分かりません。


また,先ほど算出した宝くじ定期預金の実質金利はあくまで3回とも末等の300円しか当たらないという仮定のもと算出した最低実質金利です。

期間中に1度でも1/10の確率で3000円が当たれば国債よりも利回りが良くなります。

隕石にあたるよりも低い確率の高額当選についても以下同様です。

(年に3度のワクワク・夢が貰えるという点でも単純に金利を受け取るだけよりも嬉しいかもしれません)

以上を勘案するとスルガ銀行の宝くじ定期預金は国債にも引けを取らない資産運用法の一つと考えても問題ないかもしれません。

まとめ

今回は,少しユニークな金融商品である宝くじ定期預金についてその最低実質金利を考えてみました。
私がこの存在を知ったのは萩原博子さんという方の「ちょい投資」という本がきっかけでした。
ほぼノーリスクでもしかしたら大きなリターンも狙えるかもしれないという金融商品があることを知ったときは単純に嬉しかったです。

  • やっぱりリスクの大きな株式や投資信託にはあまり手を出したくない
  • 普通の銀行預金しかしていない
  • 老後への貯蓄を1000万円くらいはリスクの低い方法で運用したい
そんな方にはこの宝くじ定期預金は債券投資と共にオススメできるかもしれません。

年3回当たらないだろうとは思いつつもワクワクできるのも宝くじ定期預金ならではの魅力かもしれませんね。


それでは,今回はこの辺で

サヨナラ~