マネーリテラシー概論 超入門【第6回】債券
マネーリテラシー概論 超入門【第6回】債券
知っている人は知っている穴場金融商品
マネーリテラシー(略してマネリテ)概論 超入門シリーズもいよいよ第6回です。
前回は具体的な資産の運用法紹介の初回として身近な銀行預金について触れました。
過去の記事で初心者の方向けの初めての証券会社選びについても触れているので参考までにどうぞ。
さて,証券会社の覗いてみると他の金融商品に紛れて少し目立たない地味な子がいるかもしれません。
その金融商品こそ本日の主役である「債券」です。
株式や投資信託に比べて普段あまり耳にしない債券ですが,実は知る人ぞ知る穴場の投資先であり,私の大好きな金融商品の一つでもあります。
今回は,そんな債券の魅力・奥深さや注意点などについてご紹介します。
キーワード
- 発行体(格付け)
- 国債・社債
- 仕組み債
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今回以降,特に大事なことですので,しっかり書いておきます👍
(財務省ウェブサイトよりコクサイ先生,https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/assets/img/exam/fig-a.png)債券とは?まず,例の図で債券という資産の立ち位置について改めて見てみましょう。 債券は銀行預金よりもリスク・リターンは大きく,株式や投資信託よりもリスク・リターンが小さな金融資産でしたね。 株や投資信託,FX,純金積み立てなどなどテレビCMや日常生活の中で名前だけでもよく聞く金融商品がある一方で,債券はあまり聞きませんよね。 そんな地味で馴染みのない債券ですが,実は有名で人気な株式よりも3割ほど市場が大きいそうです。 1) (私たちが知らないだけで,実は奥深い金融資産なんですね。) そんな,債券を私なりに一言で言い表すと「国や企業の借金(借用書)」となります。 これだけだと?という感じかもしれませんが,つまり,国や企業などが発行する”債券”というものを投資家が買うと,その購入金額が国や企業に渡ります。 代わりに投資家は債券を持っている限り予め約束された通りの利息(クーポンとも呼ばれます)を受け取ることができます。 そして約束の時が来ると買った時に払った金額(つまりは元本)も帰ってくる金融商品です。 ただし,発行した国や企業など(発行体と呼ばれます)が倒産してしまったり,戦争など大きな混乱に巻き込まれた場合などはこの約束が果たされず(債務不履行),元本を一部または全額失う可能性もあります。 ちなみに,このようなリスクのことを信用リスクと呼ぶのでしたよね? しかし後程触れますが一般的にその可能性も比較的低いのが債券です。 銀行ではなく,あなたが投資家として個人で対象に融資するというとらえ方もできますね。 私の説明だけだと心許ない気もするので,参考文献の共感できる表現もご紹介しますと,例えば,参考文献に挙げたミアン サミさんの著書では ”「今のお金」と「未来のお金」を交換する投資商品” と紹介されています。 また, ”長い期間(1年以上)の定期預金のようなもの” とも表現されています。 今手元にあるお金を,将来的に少しでも増やして返してもらうのが債券投資の目線であると考えると的確な表現であると思います。 また定期預金のようにリスクも低い投資商品であることがわかります。 債券で考えるべき軸投資先として債券を選ぶ際に,幾つか考えるべき軸があります。 主な軸について(リスクにも触れながら)それぞれ解説していきます。 発行体(リスクの種類:信用リスク,カントリーリスク)あなたが仮に人にお金を貸す際に,最も重視することは「貸したお金がしっかりかえってくるだろうか?」ということではないでしょうか? この人は借金を返してくれるような信用できるひとだろうか?と考えると思います。 債券であっても,この考え方に変わりはありません。 ここで債券の場合,お金を貸す相手は発行体と呼ばれます。 発行体が国であれ国債,会社であれば社債というように,債券の種類を発行体で分ける場合も多いです。 債券を購入する際に,約束が果たされそうかどうか見極めるにはこの発行体の信用力が大切です。 発行体には国や株式会社などの一般企業だけでなく地方自治体や独立行政法人なども含まれます。 最近では「東京大学が大学債を発行」というのも話題になりましたね。 (*国や政府関連機関,地方自治体が発行する債券を特に公社債と呼びますが, 公社債の社を一般企業という意味で捉えているいるサイトなども存在するため, ここでは,公社債という表現は控えます) 信用力の高さは 国>株式会社や先進国>発展途上国,大企業>中小企業 などのようになんとなくはわかる気がします。 しかし,具体的にどの団体がどれくらい信用できるのかということを判断するのは少し難しいかもしれません。 そこで,参考にすると良いのが信用格付”です。 これは,R&IやS&Pといった格付会社と呼ばれるところが,それぞれの会社の基準に基づき,発行体となる対象の団体にどれくらいの信用力があるか格付けしたものです。 この格付けは例えばAAAやCC,B+やA-などのようにアルファベットや符号を用いて表現されます。 例えば,最近(2020.12月)発行された「第57 回国際協力機構債券」の発行体である 独立行政法人国際協力機構(JICA,ジャイカ)は,R&I という格付会社からAA+の信用格付を 2020 年 12 月 10 日付で,S&P という格付会社からA+の信用格付を2020 年12 月10 日付で取得しています。 先に示したように,それぞれの格付会社で基準は異なりますので,R&IのAA+の格付けの方がS&PのA+より上ということではありません。 また,BよりAが,-より+の方が良いという一般的な認識で大丈夫です。 決して,格付会社が元本や利子の支払いを保証してくれる訳ではないので,過信は禁物ですが,無いよりは有ったほうがましな判断ができるでしょう。 私が以前読んだ本によれば・そもそも債券は財務がしっかりした所でないと発行できないようです。 その点でも,債券は比較的リスクの低い投資先といえそうです。 (加えて,発行体が倒産した場合,株主などの出資者よりも,お金を貸している債権者への返済の方が優先されるそうです。このことは株式よりも債権の方がリスクが低い金融資産である根拠の一つとされます。) 金利(リスクの種類:金利変動リスク)ただお金を貸して,貸した分だけしかお金が返ってこないのでは投資をした意味がありません。 また,大きなリスクを取って格付けの低い会社の債券を買ったのに,リスクの小さな債券よりもリターンが小さいのは困ります。 そういうことで,発行体の信用の次に気にするべきなのが金利ではないでしょうか? 第3回で触れたように,リスクとリターンは表裏一体です。 その例によって,発行体の格付が低いほど一般的に金利は良くなります。 その逆も然りです。 (と言いつつ,例外があるのも債券の世界ですが。) 発行体と金利を見てリスク・リターンのバランスが確認出来たら,次に金利について気にするべきことは,その変動です。 変動といっても,ここでは債権そのものの金利だけでなく,外界の金利についても気にする必要があります。 例えば,金利が0.05%に固定された5年の個人向け国債を買ったのに,国債を買って1年のうちに銀行の定期預金(外界)の金利が0.1%まで上昇した場合,元本割れこそしないものの,銀行の定期預金の方がお得ということになってします。 つまりは,機会損失につながります。 金利ではありませんが,物価の上昇率が債券の利率を上回った場合も同じ事が言えます。 逆に,定期預金の金利や物価が下がった場合には固定金利の方が有利だったりもします。 一方で,債券の中には金利が変動するものもあります。 例えば,日本の個人向け国債(後述)のうち10年満期のものがそうです。 債券を選ぶ際は債券の金利だけでなく,外界の金利がどのように変動しそうか? 固定金利なのか変動金利なのか?ということにも注意しましょう。 期間発行体や金利と同様に,気にすべきなのが期間です。 債券に限らず,投資をするうえで遠い未来ほど予測するのは難しいです。 今は格付けの高い発行体でも,この先もずっと調子が良いという保証はありません。 つまり,期間が長いほどリスクが大きな債券ということが言えます。 一方で,ある一定の条件で予定よりも早く元本が返還される債券もあります。 予定通りの期間で返還される場合を満期償還と呼ぶのに対し,予定よりも早く返還される場合を早期償還といいます。 早期償還では,予定よりも早く手元に元本が戻ってくる一方で,期間が短くなった分,受け取れる利子(リターン)も減ります。 主にこの3つが債券を選ぶ際に考えるべき軸となります。
また,債券というのは基本的に満期まで持ち続ける資産という考え方が一般的ですが, 途中で換金したり,売却したりできる場合もあります。 この場合,価格変動リスクについても金利変動リスクとセットで考える必要があります。 (とはいえ,債券価格の変動は株価の変動より一般的に小さいとされています。これも債券が株式よりもリスクが低い根拠の一つとされます。) 外国の(外貨建て)債券を買った場合にはさらに為替変動リスクも重要になります。 個人向け国債ここで,数ある債権の中から代表で個人向け国債についてご紹介します。 さて,このシリーズではもともと資産運用・投資に興味がありつつも,未だに手を出せないでいるという初心者未満の方を対象に,私なりに投資についての基本的な考え方と様々な資産の形態・特徴についてお伝えすることを目的としています。 そうは言ってもやはり,銀行預金以外に手を出すのは怖いと感じている方も現時点ではいらっしゃるのではないかと思います。 そんな方にも最低限検討していただきたいのが「個人向け国債」です。 個人向け国債は,その名の通り日本国が発行している国債です。 以前は数か月に発行されていたようですが,最近では毎月発行されています。 また,個人向け国債は1万円から1万円単位で購入可能です。 (1万円,2万円,3万円…というように買えるということです) 個人向け国債には3年満期,5年満期,10年満期の3つがあります。 このうち3年と5年のものは固定金利,10年のものは変動金利で,それぞれ年率0.05%(2020.12月現在,税引き前)の最低金利が保証されています。 先に述べたように,固定金利の国債は0.05%の金利が償還まで変わらず続きます。 一方,変動金利の国債は最低でも0.05%の金利が保証されるだけでなく,状況によってはそれ以上の金利で利率で利子を受け取ることができます。 つまり,金利が上がることはあっても約束された利率よりも下がらないということです。 利子は半年ごとに年2回受け取ることができます。 先ほどの年率から計算すると6か月に一度,投資額の0.025%(税引き前)分の利子が受け取れるということですね。 個人向け国債は発行後1年経てばいつでも途中換金が可能です。 ただし,この場合過去2回(つまり1年分)の金利分がペナルティとして差し引かれます。 とはいえ受け取った分を返すだけで,実質元本割れすることはありません。3) また災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害により被害を受けた場合、保有者本人が死亡した場合には,特例として1年未満でも途中換金が可能です。 (参考:財務省,個人向け国債 商品概要) ここまでは,上記の財務省のサイトを読めばわかることです。 では,個人向け国債が初心者向けといえるのでしょうか? ここで,
さて,この日本銀行券を刷れるのは誰だったでしょうか? これについては前回の第5回で少しだけ触れましたね。 わが国唯一の中央銀行であり発券銀行である「日本銀行」でしたね。 これらが何を意味しているかというと,日本国が今あるお金で借金(つまり国債)を返済できなくても,日本銀行が新しくお金を刷って返すことができる。 ということです。 これまた第1回の復習ですが,世に出回るお金の枚数が増えるとインフレになるのでは?と思われますが,喜ぶべきか悲しむべきか,そこまで考えて日々過ごしているのはおそらく日本国民のごく一部でしょう。 日本銀行券は何枚あっても足りませんし困りませんからね~。 また,国と銀行とでどちらの方が潰れにくいかと聞かれれば普通は国と答えるでしょう。 そういう訳で,日本国債は数ある投資商品の中でもかなりマシな部類に入ります。 ちなみに,財務省のサイトには日本国債について確認できるクイズが用意されています。 大事なことは上記で確認しましたので,理解度チェックのために試してみましょう。 (参考:財務省,個人向け国債,テスト) ちなみに,全6問有ります。 この記事を書いている以上,当然ですが私は全問正解でコクサイ名誉博士判定でした😉 皆さんは,何問正解でしたか? 危険⁈な債券上記の個人向け国債を筆頭に,一般的に債券は比較的リスクが低い割に銀行預金よりはかなりマシで穴場的な資産であることをお伝えしてきました。 ここまで紹介してきた債券は投資家が発行体と呼ばれる国や法人にお金を貸し,対価として利子を受け取るという最もシンプルで基本的な一般的な債券でした。 こうした債券は、一般債という呼ばれ方をすることが有ります。 一般債というものが有るということは,そうでないものもあります。 それが,株価連動債やEB債などを含む仕組み債と呼ばれる債券です。 仕組債とは,本来の債券という金融商品の中によりリスキーな金融商品(先物,信用取引など)を仕込み,一般債に比べ高い金利を実現した金融商品です。 それと共に複雑な条件が盛り込まれている場合がほとんどです。 それぞれ簡単に説明しますと, 株式連動債はその名の通り,対象銘柄と呼ばれる会社の株価によって金利が変動したり, 場合によっては元本が割れたり(ノックイン)する債券, EB債というのは,例えば日本円で買った債券なのに対象銘柄の株価によっては,日本円ではなく株式で返還されることが有りうる債券の事です。 ここで気づいて欲しいのは,債券のはずなのにいつの間にか株式の話にすり替わっているという点です。 リスク・リターンの図で示したように,株式は債券よりもリスクが高い金融資産ですが,対象銘柄が数か月の間に5%上昇したらなどという早期償還条件が付いているものも多く,この特徴に一般的な低リスクという債券のイメージが加わり,とてもおいしい金融商品に見えてきます。 しかし,裏を返せば
という投資家をコケにしたジャイアニズムな商品です。 実は私も1度だけこの仕組債のうち株式連動債に手を出してしまったことが有ります。 発行体はそこそこ格付の高いフィンランドの銀行で,金利は税引き前で13%以上。 幸い2つの対象銘柄の株価はどんどん上昇して早期償還条件の5%以上に上昇していましたが,どちらか一方でも株価が一定の水準を下回ると元本割れするので,早期償還を迎えるまでの3か月は対象銘柄の株価が心配で毎日チェックしていました。 また,その株価の上昇を見ていると「こんなに上がるんだったら仕組債でなくこの会社の株を直接買ったほうが良かった」という気持ちにもなりました。 確かに,株価が下がったからと言って直ちに元本割れするわけでもなく,利率も比較的良いという点では株式よりも低リスクで銀行預金よりもハイリターンな金融商品とも言えます。 通常の株式は売却しなければ損が確定しないのに対し,ある一定の期間内で株価が一定以下だと元本割れが決定してしまう仕組債は決して良心的で初心者向けな金融商品とは言えないでしょう。 初心者のうちはこのような危ない債券は避けるようにしましょう。 まとめ今回は,意外と穴場な債券投資の特徴と注意点について簡単にご紹介しました。 債券は他にも色々なバリエーションがありますがこの概論シリーズだけでは紹介しきれませんが,この記事をきっかけに債券に興味を持っていただければ幸いです。 投資は怖いという方も,1年以上使わない10年くらい寝かせて置けるお金があるのであれば この機会に,金利変動型の10年個人向け国債を検討してみてはいかがでしょうか? 銀行預金よりは有意義にお金を運用することができるのではと思いますし,キャッシュバックキャンペーンを行っている証券会社もあります。 (金利と共に元本が返ってくる上にキャッシュバックなので実質その分貰えるわけです。) また,国債の金利でも満足しないという方ももう少しリスクはあるけど金利ももう少し良い独立行政法人が発行する一般債などを買ってみてもいいかもしれません。 くれぐれも,危険な仕組債には注意しましょう。 (普段は仕組債ばかりで一般債はあまり見かけませんが) やはり,おいしい話は自分からは歩いてこないです。 次回は,とうとう投資の王様である株式についてご紹介します。 とはいっても,株式もかなり奥深い資産なのでこの概論シリーズでは本当に基本的な所をほんの少しずつだけ取り扱います。 それでは今回はこの辺で、 お疲れ様でした~。 前回:【第5回】銀行預金 番外編: 証券口座 どっちがいいの? 次回:【第7回】株式 参考文献 1)ミアン サミ,”教養としての投資入門”,朝日新聞出版,2020,p.183 2)同上,p.188‐194 3)山崎 元・大橋 弘裕,”難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください”, 文響社,2015,p.49-53 4)同上,p.17‐34 |
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