【ケーススタディ】
 プレナス上場廃止にみる内在する流動性リスク


こんにちは,当ブログの管理人のユメまるです。

本日(2022/12/1)の朝,日経新聞社系列のテレ東が配信するニュース番組「モーニングサテライト」を見ていた私の目に驚きのニュースが飛び込んできました。

なんと,私の好きな飲食優待銘柄であるプレナスが上場廃止するというではありませんか!

ということで今回はケーススタディということで,実際の事例をニュースで見ながら過去のマネーリテラシーに関する記事の復習をしようという試みの第一回です。

今回の復習項目はズバリ「流動性リスク」です。


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【事例紹介】飲食優待銘柄プレナス創業家による株式買い占めで上場廃止へ


最初に日経新聞より問題のニュースの記事を引用します。

定食店「やよい軒」などを展開するプレナスは30日、塩井辰男社長ら創業家の資産管理会社である塩井興産によるTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。今後、東証プライム市場での上場が廃止となる見通し。原材料価格や人件費の高騰などで外食産業を取り巻く環境が厳しさを増すなか、非公開化を通して経営の改革を進める。

塩井興産は10月17日から11月29日までTOBを実施し、買い付け予定数の下限(973万8914株)を上回る1854万1176株の応募があった。12月6日付で応募株すべてを買い付け、89.3%の議決権比率を握る。その後少数株主に対するスクイーズアウト(強制買い取り)を実施し、プレナスを完全子会社にする予定。

引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC304EN0Q2A131C2000000


私なりに要約しますと
  • 「やよい軒」や「ほっともっと」を運営するプレナス(9945)の株を創業家が買い占めました。
  • 理由は経営権を創業家のもとに取り戻して効率的な経営のために改革したいからです。
  • そのためには最高決定権のある株主は自分たちだけの方が都合がよいです。
  • 背景としては原材料費,人件費の高騰があります。
  • 株式市場に出回る株が少なくなったのでこの会社は上場廃止になります。
  • まだ株を引き渡していない株主からは今後強制的に株を買い取ってすべての株式を創業家の手中に収めるつもりです。

わかりやすいように?少し表現を面白おかしくしてみましたが,こんなところでしょうか?


なお,初心者向けに記事中の用語の解説を私なりに超噛み砕いて紹介しますと

・TOB(株式公開買い付け)
…現在の株主たちに対して定額で株の買い取りを行うこと。
 (一口〇〇円で買い取りますよ~、ということ)
 
通常上場されている株式は(わかりにくいけど)無数の売り手と買い手の合意があって
初めて売れる株数と価格が決まり売買が成立します。

だから思い通りの価格で売りたいだけの株が売れないこともあります。
 
しかしこの場合は,特定の買い手が買い取り価格を公に提示し,株主がその価格に納得できるなら株式市場での株価に関係なく売りつけることができます。

ということで株を買い占めて経営権が欲しい人が良く使い手法?です。

なお,別の関連記事で説明されていましたが今回は経営陣が買収する側に含まれるためMOBと呼ばれるようです。

逆に以前記事で紹介したコロワイドによる大戸屋の買収は経営陣が買収にすんなり応じなかったため「敵対的」買収と表現されていましたね。


・スクイーズアウト(強制買い取り)

この用語については初見なので素直に調べました。
以下,参考にさせていたサイトから一部抜粋して引用させていただきます。

スクイーズアウトとは、少数株主を締め出す手法です。少数株主の排除により、意思決定を迅速に行えるようになる点がメリットです。スクイーズアウトの方法や手続き、デメリット、事例をくわしく解説します。(公認会計士 前田 樹 監修)


具体的な方法としてはいくつか(株式譲渡請求,株式併合 etc...)あるようですが,共通して大株主にのみできる力業であるという印象を受けました。

株式投資の深淵を少し垣間見た気がしますね・・・。


【事例研究】

対象銘柄について

まずは,今回注目の銘柄について基本情報を見てみましょう。

プレナス(9945)

プレナスは皆さんご存じの定食屋「やよい軒」やお弁当屋さん「ほっともっと」を全国に展開する小売業の会社です。

あまり一般に知られていないようですが,MKレストランというブランドも展開しています。

本社は東京ではなく九州の福岡県 福岡市 博多区にあります。
(上場企業としては珍しいですかね?)

現在の代表者は代表取締役社長/社長執行役員の 塩井 辰男 氏です。

大株主として,合同会社塩井興産と自社が多くの株式を保有しています。

いまのところ東京証券取引所のプライム市場に上場しています。
(上場廃止予定ですが...。)

株主還元
・2019年~2023年まで年間配当額は30円または60円と推移しています。
 中間配当と期末配当でそれぞれ30円,どちらかが欠ける年もあったようです。

・100株以上を1年以上継続保有した株主に対して,食事券を進呈していたようです。
 (飲食銘柄ならではの魅力的な株主優待でしたね。こちらも廃止されますが)

【考察】優待投資家の行く末は?

ここからは私なりに,この銘柄と上場廃止,そして株式投資に内在する流動リスクについて勝手に考察していきたいと思います。

まず流動性リスクについて簡単におさらいすると,「売りたいときに売れない,簡単に換金できないリスク」の事でしたね?

今回の事例では創業家一族の買い占めにより,株式市場における流動比率が下がることにより上場基準を満たすことができなくなり上場廃止となります。

簡単に言うと市場での売り買いができなくなります


続いて注目していただきたいのは,【対象銘柄について】における下線部です。

この事例の特異点の一つがこの部分で,経営代表者と大株主が同一という点です。

企業家は株式会社を立ち上げ成長させると,株式市場に上場させることで自身の保有する株式を換金し大金を得ることができます。

それにもかかわらず,上場後も多くの株式を保有し続け,つまりはリスクを負い大株主が自ら経営に参加する。

そのような会社は雇われ社長の経営する会社と比較して経営が安定し信頼度が高いといえます。

(逆に大株主兼代表のワンマン経営に陥るリスクもありますが,とはいえ他でもない自身のための利益拡大に尽力してくれることでしょう)


実際に今回の対象銘柄も業績次第で欠けることがあるとはいえ,一株あたりの年間配当は安定して60円で推移しており,一時期飲食銘柄としては珍しく配当利回りが3%近いときさえありました。


一方で,飲食銘柄特有の食事券を株主優待として提供していました。

この食事券などの株主優待は大口の機関投資家には見向きもされない要素ですが,
一方で小口の個人投資家を集め上場基準の一つである株主数を稼ぐのには有効な手段と言えます。

とはいえ,昨今の東証市場再編により株主数によるハードルは下がったため,小口投資家の重要度は以前にもまして減少しましたが...。


逆に,小口の株主が多いということは買収しやすいと言い換えることもできます。


上記を踏まえこの事例の特徴をまとめると

  • 大株主=代表者で安定した経営と株主還元,買収にも強いように見えた
  • 一方,株主優待提供銘柄でもあり小口個人投資家の比率も高かった?

創業者経営で一見買収に強い体質に見えたが,それは外部からの買収の場合。
今回は内部の創業者大株主による買収(MOB)だったためそれ以外の優待個人投資家にとっては急激に流動性リスクが増大した。

実際のところは事前に買収に応じるか否かの連絡があるとは思いますが,見逃したり放っておいたりすると知らぬ間に上場廃止にということもあり得るかもしれません。

また上場廃止となると買収元にとって有利な,つまり小口株主にとっては不利な条件での買い取りに応じざるを得なくることも考えられます。

個人投資家の集まる飲食銘柄への投資は特にTOB等の買収に関しては弱い傾向があります。
(過去にすかいらーくホールディングスや大戸屋など)

買収に伴う上場廃止による流動性リスクも意識して銘柄選定はしたいものです。

まとめに代えて

今回ご紹介したニュース記事は個人的に学びのきっかけになるものだったと思っています。
(MOBやスクイーズアウト等)

また,プレナスについてもMKレストランの飲茶食べ放題を気に入っていたため監視銘柄の一つに加えていた矢先での買収報道だったので大変驚きました。

上場廃止に伴い株主優待も廃止されてしまうのは残念ですが,今後もサービスが良ければ消費者としての関りは続けていこうかと思っています。


さて今回はここまで,良い株主ライフを~♪

さよなら,さよなら,さよなら…